希望は落ちるのに安全な場所?

希望は落ちるのに安全な場所?

バンドメンバーが曲を作り、仕上げ、アレンジをして、レコーディングする過程に、私は光栄にも彼らと一緒にスタジオにいることが出来ました。下にある文章は、彼らが “If You’re Passing By”という曲に取り組んでいた時に書いたものです。

この時点では、まだアルバムは完成していませんでしたが、それがどんなものになるのか、だいたい見えていました。それでもこのブログは私の記憶から遠いところにあり、このブログについては全く何も考えていませんでした。でも彼らを見て、聞いて、音楽を通して彼らが経験していた感情を分かち合うにつれて、何か書かなければという気になったのです。これはもしかしたら使われなかったかもしれませんでしたが、私には書く必要がありました。

このブログは考えと瞬間を再び集めたもの。私が生きた瞬間の、不完全だけど、ありのままのものです。

−ステファニー

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2012年6月29日
午後5時

5年間を振り返ると、最も素晴らしい喜びは、最も深い絶望とともに、相伴って歩くものなのだと気付きます。多分結局、喜びは絶望なしでは存在し得ないのでしょう。本当に醜いものを探し当てる前に、美しいものとは何かを知ることができるでしょうか?私はYour Favorite Enemiesの物語を、このように見ています。私たちは美しい宝物が自分たちの目と鼻の先にあることを知るために、最も酷いことを経験する必要があったのです。美しい宝物…それは“私たち自身”。

今日、バンドは何年も前、私たちの周りにあるもの全てが闇でぼやけていた時期に作られた曲、”If You’re Passing By”をレコーディングしていました。でもどんなに曲が良い感じに聞こえようとも、メンバーはしっくり来るものが見つけられませんでした。アレックスはこの曲が、あまりにも巨大で、広大で、でもとても冷たい水が流れている川のように聞こえると言っていました…ゆるやかな流れ、その流れが速まることはなく、水が障害物を乗り越える必要も、そのせいで水が溢れることもないような。でも、この曲はそうあるべきではありません。アルバムは過去5年間を表すものであるべきで、この曲は少しざわめきのある、もう少し波が必要だったのです。言葉はとても深く、とても内省的で、本物の魂を探す場所を与えてくれます。まるで映画のワンシーンのように、主人公が過去に犯した過ちに気付き、改め始めるような。その時に全てが変わる…それをこの曲は体現する必要がありました…

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午前0時半

何となく、バンドメンバーは出来上がりが不服だと感じているように見えました…演奏が上手く出来なかったとかそういうことではなく、曲に込められた感情を、思ったように音にして伝えられず、まるで全てが一つに合わさっていないように感じたみたいでした。それは理解できます…この曲はバンド内の人間関係が今とは異なる、とても暗い時期であった5年前に、作詞、作曲されたもので、ライブや何かでプレイされたことが一度もなかった曲です…きっとこの曲は、メンバーそれぞれにとって異なる意味を持つのでしょう。メンバーごとに違った物語のように、それぞれの思い出を蘇らすのだと思います。何となく、一つになるというよりも、色々な曲が一気に合わさったような感じでした…でも全員が一緒にこの曲を生きなければいけなかったのです…そうする必要があるからプレイするのではなく、本当に自分が生きる曲である必要がありました…そしてこの曲にもう少し波が必要であるのと同じくらい、彼らも同じ方向を見つめる必要があったのです。リスナーをバラバラにするのではなく、どこか同じ場所へと連れて行くような…

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2012年6月30日

かろうじて睡眠と呼べるようなものを取った後、そしてまた激しく、リアルで、鮮明なディスカッションの後、バンドは全員で再び”If You’re Passing By”をプレイしました。

ここで言うべきことは、その演奏が前日の夜とは異なっていたということ…より上手くプレイ出来たとかそう言うのではなく、彼らがしたディスカッション、彼ら一人一人にとって、この曲が持つ意味についてのディスカッションによって、ようやくこの旅を全員一緒に旅することが出来たんだと思います。彼らは曲のパートや、コード、音、エフェクトなどについては、一度も、全く触れませんでした…そのディスカッションの全ては、曲の魂、精神についてでした…何故なら一度曲を理解して、その曲と近しい友達になって、それとともに異なる感情を経験してから、ようやくそれを音楽にのせることができるのです…

Comments (9)

  • RIE

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    私たちは、真の喜びを見出すために、そして人生を楽しむために、絶望を、そして苦悩を経験するのでしょうね。そのカラクリがわかった今、絶望も苦悩も、すべてがギフトになるのでしょう。

    そう考えると、やはり光なのだと・・光だけしか存在しないのだと・・気づくことができますね。光の中に、喜びの中に、そして楽しみの中に、闇も、絶望も、そして苦悩もすべて包括されているのだと。抵抗しあうものではなく、相反するものでもなく、ただ認め受け入れた瞬間に、それらは歓喜へと変化するのですね。

    本当に美しい曲だと思います。
    私にとってこの曲は、虹の様に全ての色を内在し、輝いています。

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    • Momoka

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      “絶望も苦悩も全てがギフト”という捉え方が、とても素敵ですね。でも本当にそうだと思います。

      よくメンバーが言う「めちゃくちゃになる運命だったとしても、それは僕ら自身のものだ」っていう言葉は、そういう想いも少し含まれているのかもしれないと思いました。色々な経験をしてきたからこそ、言える言葉ですよね。過去があるから、今がある。ありきたりな言葉かもしれないけど、真実だと思います。聴き心地の良い穏やかさだけでない、色々な感情が音となり、色となり、この曲の中で輝いている…それは、決してまっさらな光ではなく、どこか不完全なもの…でもきっと“真実”を表していると思います。

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  • keiko

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    私は“If You’re Passing By”を数えきれないくらい聴きました。
    他のアルバムの曲よりも…
    以前にも言ったように、“If You’re Passing By”を聴くと涙が止まらなかった。
    この曲を聴くたび、自分が大きな壁を乗り越えられなかった時期を思い出しました。

    最後の文章にも書いてるように「演奏が前日の夜とは異なっていたということ…」 これは聴いてる側も同じような気がする。
    何回も何回も聴くことによって心の中が変わっていく感じがしました。
    昔の嫌なツライ時期を思い出すけど、それは悲しいとかではなく、心の中が解放される感じでした。

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    • Momoka

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      この曲を通した、Keikoさんの旅を分かち合ってくれて、どうもありがとうございます。
      同じ曲でも、何度も聴くうちに、本当の意味での受け入れと理解をしていくんだと思います。何気なく聴いていては、きっと出来ないであろう経験…こうやって深く、この曲と真正面から向き合ったKeikoさんは、素敵だなと思います。何度も何度も聴くというプロセスを経て、きっとKeikoさんの心にある、固く結ばれた紐がだんだんと解けていったのだと思います。それはまさに“ひれ伏すことなく、身を委ねられる場所”だと思います!!

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  • Tatsuyoshi Shirai

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    私はこの曲が好きです、ブログを読んで非常に苦労した様子が伝わってきました、その分完成度が高く心地良く耳に入ってきます。
    YFEのメンバーが同じ方向へ旅が出来て良かったです。
    私も同じ川の流れに乗れるかな?

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    • Momoka

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      とても心地良く、深く響く曲ですよね。私も好きな曲の一つです。
      それぞれ性格も、人生経験も、感情も違う6人のメンバーたちが奏でる音が、一つになるって凄いですよね。ブログからも苦労した様子が伝わって来ます…でもYFEにとっては、きっとそれが一番大事なことだったんだと思います。一つになること…そしてそれによって奏でられた音を聴く、私たちはきっとそれぞれの印象を持つと思います。
      でも、この音楽を心で聴き、魂で受け取り、自分にとっての意味を見出せたら、それだけでもう旅をしているということだと思います…
      メンバーと同じ川の流れかは分からないけど、きっと流れ着く先は一緒だと思います♪

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  • Momoka

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    感情を音として表現することが、まず難しいと思っていましたが…その感情も、曲の魂と同じ方向を向かなければ、納得のいくものにはならないんだなと知りました。でも感情って人それぞれ違うし、“こう感じなさい”なんて言えない…だからこそ話し合って、分かち合って、理解し合うことが、重要なんだなと思いました。でもそれって絶対簡単じゃないと思います…ブログにも書いてあるように、6人が6人とも違うように感じながら、当時を生きて、自分なりの意見を持っていたでしょうから、全員が同じ方向を向くためには、お互いへの信頼が必要不可欠だと思います。それはまさに“美しさ”ですね…色々な経験を通して培われた絆、信頼があっての、彼らの音楽…そういう貴重なものが聴けることに感謝です!

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  • Tsugumi

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    このブログを読んで、「喜びは絶望なしでは存在し得ないのでしょう。」この部分がとてもせつなく感じました・・・何故なら、そうじゃなくても喜びはあると思いたかったからです。(あるのかもしれないけど・・・) “If You’re Passing By” この歌は大好き。でも、深く受け入れる事がまだ出来ない歌です・・・Vague Souvenirの中でこの歌だけがヒカリを見出せないでいます。。。

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    • Momoka

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      闇があるから光が映えるように、しんどい日があるから、お休みの日が嬉しいように、喜びも絶望を知れば、その本当の価値が分かる…そういうようなニュアンスではないかと思っています。

      光を無理矢理見つけなくても、良いのかも…?人生の色々な時期によって、曲ってすごく解釈というか印象が変わると思うんです。なので、きっと今はまだ、この曲を受け入れる時期に来ていないのかも?でも数ヶ月後、何年か後に聴いたとして、不思議と安らいで前へ進めさせてくれるような曲になるかもしれない。。それがつぐみさんにとっての、この曲との旅になると思います。まだ描かれていない旅…楽しんで、そして十分味わって下さい^^

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