YOUR FAVORITE ENEMIES「新宿グラムシュタイン」ミニレポート

Written by Your Favorite Enemies. Posted in インタビュー

YOUR FAVORITE ENEMIES
『As The Sun Keeps On Rising… So Are The Waves Uplifting Hearts』ミニレポート
2015/11/21 @新宿グラムシュタイン

TEXT & PHOTO:ヨコマキミヨ

以前、本誌BEEASTの特集「Editor’s Note…PASSION Extra Edition」記事にて紹介した、カナダのオルタナティブ・ロックバンドYOUR FAVORITE ENEMIES(以下YFE)が、2年ぶりに来日。11月21日(土)新宿グラムシュタインにて行われたライブ、『As The Sun Keeps On Rising… So Are The Waves Uplifting Hearts』をミニレポートにてお届けしよう。

今回のステージは、来年結成10周年を迎えるにあたり原点に回帰してバンド結成の基礎となった、Alex Foster[アレックス](Vocals)、Ben Lemelin[ベン](Bass)、Sef[セフ](Guitar)の3人による特別編成だ。また、アルバム『Between Illness And Migration』から「LITTLE SISTER」以外の曲を初めて通しで披露。エレクトロ・アコースティックコンサートと銘打たれた内容に、普段6ピースのロックバンドとして活動する彼らが3人でどのようにアレンジしプレイするのかが注目される。

2年ぶりの来日とあって、会場はいつの間にか見動きがとれないほどの超満員となった。これまでにない一夜限りのスペシャルプログラムへの期待の高まりをも象徴するかのようだ。Alex Fosterのマイクスタンドには、いつもなら親日を示す日の丸の旗が着けられているのだが、来日直前11月13日のパリのテロ事件を受け、YFEの住んでいるカナダのモントリオールはフランスとゆかりが深いことから、この日はフランスの国旗が装着されていた。日頃からヒューマニズムに溢れた言動をしているAlex Fosterらしい表現と言えるだろう。

アルバム『Between Illness And Migration』と同様に、けたたましい程の沢山の渡り鳥の鳴き声とギターのフィードバックが折り重なるイントロの「SATSUKI YAMI」からスタート。2011年、東日本大震災の2か月後の来日時、南三陸町ボランティアセンターへの訪問によりインスピレーションを受けて作られたというこの曲は、メンバーにとっても日本のファンにとっても非常に重要な意味を持っている。ステージの照明は薄暗く、まるでパーソナルな空間のシークレットショーのような雰囲気の中、オーディエンスは波に飲まれていくかのように耳を傾ける。

当初、3人編成と伝えられていたが、もう一人のギタリスト、Jeff[ジェフ]も曲によって加わり、曲ごと、更には曲間でもメンバーそれぞれがギター、ベース、ドラム、キーボードと持ち替えたり、入れ替わったりするなどして、斬新な広がりで次々と展開されてゆく。

激しさの中にも憂いを含んだAlex Fosterのボーカルに、時折Alex Fosterが振り刻むシェイカーの繊細なリズム、様々なエフェクトを駆使してバリエーション豊かに音色を使い分けたギターとキーボードが重なり、ノイジーでありながらもアーティステックで迫力あるサウンドが繰り拡げられていった。とりわけ、独特の奏法とディストーションを利かせこだわり抜いた音質を巧みに操るSefのギターは、単にプログレッシヴという一言では片付けられないほど極めて独創的だ。そこにBen LemelinとJeffが入りしっかりと全体をまとめ上げている。

いつもとは違った形態に初めは戸惑いをみせながらも固唾を飲んで聴き入っていたオーディエンスたちも、気が付けば最後には彼らの創り出すエキサイティングな波の渦へと完全に巻き込まれていた。

また今回の試みとして、メンバーが演奏するステージの背景には、YFE日本人スタッフの一人であるKosho制作の、幻想的な世界観を描き出した映像が流されていた。歌詞やアルバム制作時におけるメンバーの感情を基に作られたというその作品は、それぞれ曲ごとに変わり、より一層、心の奥深くの五感に訴えかけるような複雑なイマジネーションの世界へと観客を引き込み魅了した。

普段の6人のバンド編成でも充分に飛び抜けた意外性を持つYFEだが、今回は個々の才能がより際立っているように感じられた。それでも、あうんの呼吸とも言える絶妙に息の合ったパフォーマンスで、それぞれがぶつかり合うことなく上手く融合しているのは、バンドの基礎となるメンバー同士ならではと言えるだろう。

日頃から日本に対して並々ならぬ想いを示しているYFEだが、今回の来日公演も、日本のファンのためだけにと思いもよらない凝った企画で楽しませてくれた。次回の来日も、どんな奇抜でロックなものを聞かせてくれるのか楽しみだ。これからもますます彼らから目が離せない。

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